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【都心リゾートを愉しむ日常。】ラウンジへのお誘いは突然に - 第3話 -

2018年01月31日(水) Website運営委員会

前回のお話では、夫は食事を前にお酒のすすみ、そして妻とも和やかムードとなった。ラウンジでの食事を愉しみ、夜景を見ながら、二人は何を想うのだろうか。


ラウンジへのお誘いは突然に - 第1話 -
ラウンジへのお誘いは突然に - 第2話 -


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ほどなくすると、きのこリゾットとオムライスが完成。妻と二人でバーカウンターへ取りに行った。


「美味しそ~!」


少しお酒が入っているせいなのか、はたまたラウンジから見る夜景に心を踊らせているのか、妻のリアクションがいつもより大きい。少しばかりの恥ずかしさを感じた私は、周囲に誰かいないか見回した。幸い誰もいなかったが、テーブルにおいてある妻のグラスが空になっているのに気がついた。


「もう一杯飲む?」


と私が聞くと、妻は


「うん。」


と答え、メニューを見始めた。相変わらず悩む妻を横目に、私はビールをもう一杯頼むと、妻はグラスワインの赤をオーダーした。


フードとドリンクを席に運ぶと、妻はスマホで写真を撮り始めた。きのこリゾットとワイングラスと夜景が、きちんと画角に収まるポジションでパシャパシャと手際よく撮っている。立ち込める美味しそうな香りに、思わずフライングして一口……、と行きたくなってしまうが、ここは我慢。


「じゃあ、いただきます。」


写真を撮り終えた妻の合図で、再度乾杯したのち、スプーンを手にした。妻は美味しそうにリゾットを頬張っている。私の頼んだオムライスも普通に美味しい。


「オムライス、一口ちょうだい。」


妻はそう言うと、私のオムライスに手を伸ばした。


「オムライスも美味しいね。」


窓ガラスに映り込んだ妻の笑顔に、心の奥が弾みそうになる。出逢った頃に無理して泊まった、夜景の綺麗なオーシャンビューのホテルで見せた笑顔と重なり、思わず自分の胸をなでて、レインボーブリッジへと向かう車の流れに目をやった。


ゆったりと移り行く景色に心を、お腹もココロも満たされていく。時計の針は、午後7時半を過ぎようとしていた。


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一通り食べ終えると、いつもの他愛もない夫婦の会話に戻る。残りのドリンクを飲みながら、私は仲の良い同期に帰宅を急かされた話を切り出した。


「今日さぁ、同期のヤツから『ノー残業デーに早く帰らないと後輩に嫌われるぞ』って言われて急いで会社を出てきたんだけど、どう思う?」


「え、それだけで早く帰る理由になるの? だったら、いつももって早く帰ってきてよ~。」


「いやいやいや……。俺は俺でやることは山積みなんだけど、後輩も最近連日遅くまで残っていたっぽいし、たまには早く帰らせなきゃかなって。」


「ふーん。そういうときだけ、お人好しなんだから。」


「ま、でもさ、上司が帰るの遅いって、やっぱり嫌?」


「そうね。私は5時になったら、『お先失礼しま~す』って言って帰るほうじゃない。でも最近、次長の見る目がときどき冷たいことがあって、あれは嫌。ものすごく、嫌。」


「そうだよね。俺も3年目とか4年目くらいのときは、上司が早く帰らないの嫌だったな。」


そんな妻の愚痴に合わせながら、再び都心の夜景を眺める。皮肉にも、煌々と輝くビルの灯りを作り出しているのは、昨日の私のようにまだ働いている人たちだ。いつもは向こう側に立っているが、逆の立場になると、別の景色が見えてくるものだ。


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「よし。これからは、もう少し早く帰るようにするよ!」


そう言いながら、気持ちを新たにし、妻の手をギュッと握りしめた。



- Fin. -

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